Vol.1

気になる運転音を大幅カットした、
「良い音設計」ミキサー開発へのチャレンジ

タイガー魔法瓶として初となる、“音”に着目した商品開発

2019年に発売された、心地よい運転音を実現したミキサーSKT-A、SKR-V。調理物の衝突音やモーターの音漏れを低減させ、実感音を約45%カットした「良い音設計」で、市場に大きなインパクトをもたらした商品です。“音”に着目した開発は、タイガー魔法瓶にとっても初の試み。調理商品としては比較的長い3年の開発期間をかけ、発売に至りました。

 
高田 愛子高田 愛子

商品企画

高田 愛子2016年入社

回転機BMの企画責任者。「良い音設計」を搭載したミキサーの企画立案から携わる。

浅野 未理浅野 未理

デザイン

浅野 未理2013年入社

SKT-Aの外観の形状とカラーリングの決定など、製品のデザイン全般を担当。

大林 伸伍大林 伸伍

商品開発

大林 伸伍2010年入社

SKR-Vの開発主担当。試作手配から問題点対応、性能確認試験、量産立ち会いを実施。

舩橋 昂広舩橋 昂広

商品開発

舩橋 昂広2013年入社

SKT-Aの金型発注から量産立ち会いまでの業務担当。主に海外の現地工場で部品や量産ライン管理を担う。

小松 智美小松 智美

商品開発

小松 智美2017年入社

SKR-Vを担当。騒音測定、調理性能、温度測定など試作品の性能確認試験を中心に担当。

心地よい音を追求した、
新しいミキサーの開発

良い音設計ミキサー開発の経緯は?

高田
「ミキサーの音って、どうしてあんなにうるさいんだろう」。そんな私の率直な疑問が、開発のきっかけでした。異業界から転職したばかりだった私は、いい意味で家電業界の常識を知らなくて。一般消費者の目線で、商品企画のアイデアをぶつけてみたんです。
大林
調理性能を高めることと動作音を静かにすることは反比例する行為なので、非常にハードルが高い開発。ただ、「音」を重視した初めての商品となるので、新しい挑戦にワクワクしましたね。デシベルではなく“ソーン”という音の値も、これまで触れたことのないものでした。
高田
まず企画の前段階として音の研究を進め、人の耳に聞こえるのは“ソーン(sone)”という単位が最も的確だと学び、コンセプトに取り入れることに。ソーンとは、その値が低いほど不快音が少ないと言われます。競合各社のミキサー製品を調査し、それらすべてのソーン値を下回る、“約20ソーン以下”の静音を目指すところから開発がスタートしました。

耳障りな音はなぜ生まれる?
原因の究明と対策

どのように音を軽減していったのですか?

舩橋
ミキサーの騒音の原因は色々ありますが、中でも苦労したのがモーターから発生する音をどう抑えるか。単にモーターが回転する音だけでなく、金属の擦れる耳障りな高音が発生する箇所なんです。その対策として、モーター部分を2重の容器で囲み、外に出る音を内部で弱める措置を講じました。
小松
ところが音を外に出さない工夫を施すことで、モーターから発する熱も閉じ込めてしまい、仕様以上に高温になる問題が発生。しかも私が担当するコンパクトミキサーSKR-Vは、マイナーチェンジ商品だったため、構造を変えられるパーツにも制限があったので一筋縄でいきませんでした。
舩橋
音を内部に閉じ込めつつ、モーターの熱を排出させるための経路作りはとても困難でした。モーター下に冷却用の羽があるんですが、これを2枚構造にしたり、熱を逃がす穴の形状を横長にしたり。手加工でパーツを切り貼りしながら試行錯誤を繰り返し、音と温度のいい塩梅を地道に探っていきました。
大林
この時、1番の訴求ポイントである音について、測定・評価するのも開発チームの重要な役割。正確に測定するため外部の施設を使用するのですが、限られた日数しか借りられないため時間との勝負でした。
小松
測定して目標値をクリアできていなければ、原因を探って加工をやり直す…という工程の繰り返し。社内では数値を測れないので、必ずその場で完結する必要があるのです。そのため、色んな問題を想定して改造道具を持ち込み、トライアンドエラーを繰り返して性能の安定化をはかりました。

“音”ありきの形状からデザインを展開する難しさ

デザイン面で苦労したことは?

浅野
私は主にSKT-Aのデザインを担当しました。本来は企画のコンセプトからデザインをスタートさせるケースが多いですが、今回は“音”ありき。音を抑えるための形状…サイズ感やおおまかな形状、体積がある程度決まっているため、そこからスタイリングしていく難しさが、最初にぶつかった壁でした。
舩橋
例えば、通常のミキサーだと、調理物を撹拌する時にフタを押し上げるので、それを逃がすためにカップを高くしています。ただそうすると調理物が上にあがってバシャバシャ音を立てるので、それを軽減するためにSKT-Aはカップの身長を低く抑えた構造がマストなのです。
浅野
ですので通常のミキサーよりコンパクトですし、筒部分がやや寸胴のフォルムなんですよね。
舩橋
些細な要素の変化で音が変わってしまうので、そこからデザインを変えることはできない…というのはとても厳しい条件だったと思います。
浅野
極力変えない、というのは本当に大変でした。ただ、制約が多い中でも力を入れたのが、音にこだわった製品であると想起させるデザインに仕上げること。“パンチングメタル”というメッシュ機構のステンレスを胴体に巻き、まるでスピーカーのような音へのこだわりを伝える演出を施した外観にしました。ただこれは、設計と開発を泣かせる仕様だったみたいで(笑)。
舩橋
はい、聞いた時はマジか…と思いました(一同笑)。設計自体はさほど大変ではなく、ステンレスの板材を1枚入れ、透明なパーツでカバーすることでクリアできたのですが、量産・組み立てが課題だらけで。成形してラインに上げるまでは作業者が触ることになるので指紋の問題が…など単純に人件コストもかかるので、何度も双方で調整というか…“戦い”がありました。
浅野
いったん諦めるか…となった時もあったのですが、実寸のモデルがあがってくると、「やっぱりパンチングメタルがあった方がいいね」と社内でも前向きな声があがって。大きく風向きが変わったきっかけでしたね。そこからはチームで気持ちを一つに、妥協点を探り合いながら実現に至りました。

新製品商談会で「これなら欲しい!」と大評判

完成した試作品への反応は?

浅野
初のお披露目となった新製品商談会では、企画や設計、開発メンバーのみんなで会場に立ち、商品説明を行いました。ブースには人だかりができて、多くの方から「すごい!」「これなら欲しい!」という声をいただいて。がんばって良かったと喜びを分かち合えた瞬間でした。
大林
遠目で見ていても分かるぐらい、ほとんどのお客さまが「ああ、静かやね」という反応を見せてくれていましたね。嬉しかったです。
高田
事前の検証では、赤ちゃんのいるご家庭にモデル機を持ち込み、動作音で赤ちゃんが泣かないことも証明されていましたからね。それともうひとつ、音が小さい=性能は低い、と思われてもいけないので、“パワフルモード”に切り替えれば切削性能がさらにアップする点もPR。アボカドの種を丸ごと切削する実演を行ったのですが、みんなとても驚かれていましたね。
大林
そうして、いよいよ量産体制へ。音の大きさを安定して達成する必要があるので、部品や組み立てのばらつきで数値がぶれないよう慎重に検証。約20ソーンと謳っているからには、それより1ソーンでもあがってしまうことのないように、作業指示書の作り込みや啓蒙を行い、正確に、厳密に作業してもらえる量産体制を整えました。
小松
目標の基準をクリアして、無事発売に至った時は、大きな達成感がありましたね。

“必ず喜んでもらえる”確信が、チームを支えた

プロジェクト成功のポイントや今後の目標は?

高田
立ち上げから発売まで3年、長い開発期間を要しました。必ず喜んでもらえる確信があったから、諦めずに完遂できたのだと思います。
舩橋
「良い音設計」という切り口が、市場にとってすごくいいものというのは、チームみんなが感じていましたね。
浅野
本当にその通りで、“市場へインパクトをもたらす”という共通の目標が、よりチームワークを強くしていたと思います。
大林
前例のない開発は困難も多いですが、その分、実りの多いプロジェクトでした。これからもまだまだ関わったことがない分野にチャレンジして、自分のレベルをあげていきたいです。
小松
音について、とにかくたくさん勉強をした案件でした。せっかく得た知識を生かし、ブレンダーやフードプロセッサー、ホームベーカリーなどにも、良い音設計の技術を応用していきたいですね。
高田
まさに当社が掲げるミッションの通り、“食卓に新しい常識”を作ったプロジェクトだと思います。これからも、常識を非常識に打ち破っていきます!

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